腐大生の徒然日記

耽美、BLの沼から脱け出せない大学生による雑記ブログです。主にBL作品(漫画、小説、映画etc..)の感想、BL愛を綴っています。その他頻出話題は映画、音楽、絵画、グルメ等になると思います。

『仮面の告白』三島由紀夫  ―私には凡(すべ)てがわかった 

こんにちは、カエルです🐸

今日は久しぶりに一般小説を紹介させていただきます。私の中学時代の恩師が推していたこの作品です!

 

三島由紀夫 仮面の告白 新潮文庫 です!

 

中学時代、先生に「読むべき!」と言われ読まされました(笑)

その時は難しいな…と思っていたのですが、大学生になって再読すると感じ方が全く違いました。

 

そして!!BL好きさんへオススメの一冊です!!

 

 

 

【注意】

この記事は生粋の腐女子が書いているので、たま~に腐目線のおススメ、感想が出てきます…

ご了承ください…<(_ _)>

 

 

仮面の告白 (新潮文庫)

 

あらすじ

「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」と作者・三島由紀夫は言っている。女性に対して不能であることを発見した青年は、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求し、“否定に呪われたナルシシズム”を読者の前にさらけだす。三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と、作家活動のすべてを予見し包含した、戦後日本文学の代表的名作。

 

主な登場人物

私・・・この物語の語り手

近江・・「私」の中学の同級生。体格の良い少年

園子・・大学生の「私」と親しくなった19歳の女性

 

 

さらに詳しいあらすじ&🌟おススメPoint!

 

 

 

3つの特筆すべきこと

 物語の語りては「私」という男性です。彼は病弱で幼い頃祖母に大事に大事に育てられました。

この作品は「私」が幼少期からの出来事を回想するように話が進められていきます。

「私」には自分の特性について特筆すべき「3つの前提」があるのだと言います。

 

前提其の一

一つ目は悲劇的な運命やある人の死官能的な強い欲求を感じたことです。

「私」は幼少期に目にした糞尿汲み取り人、ジャンヌダルクの絵画、そして兵士の汗の匂いに、彼らの「悲劇的な運命」というものを感じとりました。幼いながらも彼はそれを感じ取り“悲劇的なもの”に強い興味を惹かれます。そして当時は性的ではないもののそれに官能的な欲求を感じたのです。

 

前提其の二

二つ目は扮装願望です。

「私」は幼い頃松旭斎天勝の舞台を見に行きます。それは「悲劇的」な劇で彼は天勝という人物に惹かれます。また、幼い彼はクレオパトラにも魅了されました。彼は天勝とクレオパトラの衣装を身に着け彼らになりきることに熱中をしたのです。

 

前提其の三

三つ目は「殺される王子」の幻影です。「私」は幼い頃よく本を読んだそうです。でもきまって物語に出てくるお姫様は愛することが出来なかった。王子様、とりわけ「殺される」王子様愛したのです。

ある日彼はとある童話を読みました。その物語は途中王子様が竜に襲われ殺されてしまうのです。でもその後で不思議な力によって傷一つない元気な体に戻ることができたというハッピーエンドで締めくくられていました。ただ「私」はこのハッピーエンドには魅せられず、物語の途中の王子が竜に襲われ悶え苦しむ場面に強く魅了されたのでした。そこで王子が竜に殺されるように自分の中で話を捏造し物語を読んでいました。

 

また、「私」は自分が戦死したり殺されている状態を想像することに喜びを感じていました。でも死ぬことへの恐怖は人一倍強かったのだそうです。

 

〘🌟おススメPoint!〙

この特筆すべき3つの「前提」自分が死んでいる空想について。これは「私」が成長するにつれて確実に根深く彼自身にまとわり付き、彼のこれからの人生に大きく影響することになります。

後に作中に登場する結構サイコパス妄想「悪事」もこの前提の要素がふんだんに出てきます!!

 

 

近江との出会い

 「私」に中学で運命的な出会いが訪れます。同じクラスの近江という青年との出会いです。

近江は端正な顔立ち。そして同級生達と比べると非常に逞しい体つきをしている一目置かれた存在のような生徒でした。「私」にとっても近江は少し距離のある存在で親しく話すようなことはありませんでした。でも「私」は近江にどこか興味を抱いていました。

 

―雪晴れのある朝。

「私」は雪合戦のために早朝に学校へ行きました。ところが早く来すぎたため周りに生徒たちの姿はありません。静かな学校。

 

しかしそこに真新しい足跡を見つけたのです。その足跡をたどっていくと…

そこにはなんと近江がいました。

 

すると彼は「私」の存在に気が付き呼び止めます。「私」は近江のもとへ行き、慣れないながらもなんとか会話をしようとしますが近江は「私」のはめている毛糸の手袋小ばかにするのです。すると近江の雪で濡れた皮の手袋をまとった手が「私」の頬を包み……

 

その瞬間「私」は近江に恋をしたのでした。

 

ただその恋はまさかの形で終わりを告げます。

いや、終わりにすべきなのだと「私」は悟るのです。そこには前述の「前提」が関係していて……

 

〘🌟おススメPoint!〙

近江への恋心に終止符を打った後も、この近江の面影は一生「私」の脳裏に焼き付くことになるのです!

 

そして腐女子腐男子の皆さんへ朗報です。

この近江「私」の学生時代のエピソード…かなり良いですよぉ(;´д`)ホォ…

雪の中。皮の手袋と頬に伝わる熱。そして白い手袋…

三島由紀夫によって丁重に綴られた文体が、これまあ美しい情景を妄想させてくれますのよ…(+o+)

 

 

私には凡(すべ)てがわかった。

時は戦時中。「私」は大学に進学をしました。

「私」は生まれつき体が弱かったため兵役を免れたのです。そして21歳のある日彼は…

 

―下手なピアノを聞いた。

 

その演奏者は友人の妹、園子でした。

 

これまで「私」は誰かと交際することはなかったものの恋はしてきました。しかし彼は女性に欲情したことは皆無で、どこか近江を感じさせる男性ばかりに惹かれていたのです。そしてそのことに悩み、自分は女性を愛するのだと言い聞かせ女性に「恋をしていそうな態度」をとっていたこともありました。

でもそれは「私」にとって苦行以外何物でもなかった。自分に言い聞かせるのはとても疲れるのです。

 

ただ園子は違いました。「私」は園子を目にし素直に「美しい」と思ったのです。

肉欲や性欲ではありません。19歳の園子の優雅な容姿、そして無垢な魂美しいと思ったのです。そうして園子と「私」の、男女の親しい関係が始まりました。

 

 

園子はとても魅力的な可愛らしい女性でした。頬を赤らめて自分と話す少女。そして何度も二人で会ううちに「私」は園子も自分に気があることを感じ取ります。

そして決心のついたある日、「私」は園子にキスをするのですが……

 

〘🌟おススメPoint!〙(ややネタバレ!)

私は彼女の唇を唇で覆った。一秒経った。何の快感もない。二秒経った。同じである。三秒経った。

——私には凡(すべ)てがわかった。  p182

「私」が園子にキスをした場面です。この表現が本当に大好きです!!

そう、「私」は三秒で全てを理解したのです。

何を理解したのか、そしてこの後「私」はどうしたのか……

 

 

 

セバスチャン殉教図の面白エピソード

 「私」は幼い頃『セバスチャン殉職図』という絵画を目にします。その時初めて性的興奮というものを感じていました。

 

この絵画は男性同士の同性愛を語る上では結構不可避ですね( ^^) 

そしてとても興味深い作品なんですよぉ…

 

☟その絵画はこれです。こちらはセピア色ですが本物はカラーです。

Guido Reni 『Saint Sebastian』 (グレイド・レニー『聖セバスチャンの殉職』)

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Saint Sebastian. Process print after Guido Reni, 190-. Public Domain Mark

(画像はWellcom Collectionさんからお借りしました)


肩幅もがっしりしていて鍛え上げた体は大人の男なのに、まだどこか幼さが残る顔つきの青年。彼は両手を縛りあげられ天を仰いでいます。そして陶器のような艶やかな肌をもつ体には痛々しく突き刺さった矢が……(;´Д`)

 

この『聖セバスチャンの殉職』のテーマは多くの名だたる画家たちが描いてきて、作品数はとてつもないです!!

今でこそ“体に矢が突き刺さった美青年が木に括り付けられている“という印象の聖セバスチャンですが、実は本来はめっさ髭おじさんだったんです!(←ひどい…)

それが時代を重ねるうちに美青年化してきたんですよね(笑)

 

美青年化してからは大変で!

フラ・バルトロメオという画家が描いた聖セバスチャン殉職図が教会に飾られたのですが……この絵の前に信者の女性たちが集まってΣ(゚∀゚ノ)ノキャー興奮!と大騒ぎ(笑)そのためこの絵は撤去されてしまった……

というエピソードが16世紀に書かれた書物に残っていたそうです(笑)

【参考:crea.bunshun.jp 愛しの聖セバスチャンvol.1】

 

絵の発注者のニーズに応えたのかよく分かりませんが時代によって描かれる対象の年齢、見た目が変化するものって結構ありますよね。

他にはキューピッドとか…(今でこそ赤ちゃんですが元は青年です!)

 

 

ちなみに作者の三島由紀夫後にこの絵画の青年、聖セバスチャンを自身に置き換えた写真をあの篠山紀信(あっきーのお父さんですね!)に撮影してもらっています!

 

この“聖セバスチャンの殉職”はゲイアイコンにもなっているんですね。

 

 

最後に 

仮面の告白』おススメポイントのまとめ

・「私」に影響を与える3つの前提

・【BL目線ですみません…】私と近江の美しい絡みに思わず悶絶

・私には凡てがわかった

・聖セバスチャンの殉職について知ろう!

 

 

 この小説の主人公である「私」は誰なのか、本文でははっきりしていません。

作者の三島由紀夫は何を想って書いたのでしょうか…

 

これはあくまで私の推測ですが三島由紀夫本人が実際に感じていたことを織り交ぜながら書いたのではないでしょうか…

聖セバスチャンに影響を受けていたのは確かでしょう。

それから近江の幻影と扮装願望。三島は大人になってからですが体を鍛えていたそうです。もしこの近江の幻影扮装願望が2つのことが三島自身にあったのなら 、体格のよかった近江に近づきたくて体を鍛えた……とも考えられる気もします。

 

実際はどうなのか分かりませんが(;^_^A

 

 今は家にいる時間が多いですよね。私も実家にこもっています(>_<)実家には三島由紀夫の本が何冊かあるので他にも読んでみようと思います!

 

最後まで読んでいただきありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ

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