こんばんは、カエルです🐸
以前記事に書いたラベンダーがきれいな時期にぜひとも読みたかった一冊。それを図書館で借りてきましたぁ!!
ちなみにその記事です☟
fudaikaeru.hatenablog.com
閉鎖されている館にあって予約をしないと借りられない本だったので、他の本よりひと手間かかりました&届くまで時間がかかりました。でも待った甲斐がありました!
期待通り、いや期待を超えるほど、“耽美系”が好きな私のツボにはまる作品でした(笑)
赤江瀑先生『オイディプスの刃』河出文庫になります!
ラベンダーの香りと日本刀が印象的なこの作品。
「香」と「刀」が持つ魅惑的な力は底なしです。
一日のうちに次々に死を遂げた刀の研師、ラベンダーを愛した母、家族を愛した父。そして残された三兄弟がそれぞれたどることになった破滅的な運命!
耽美的な美しい世界観?と魅力的な関西の言葉にどっぷりつかれるミステリーです♪
香りに興味のある方、日本刀に興味のある方、そして…兄弟同士の確執系の話が好きな方におススメです!
☟この表紙好きすぎるよ…(;´Д`)
あらすじ
夏の陽ざかり、稀代の妖刀「青江次吉」が招いた驚愕の惨劇。大迫家の次男・駿介が憧憬を抱く刀研師の死を皮切りに、父と母も次々と自死を遂げたのだった。事件により離散することとなる駿介たち三兄弟。十三年後、「次吉」は、母の愛したラベンダーの香りとともに再び駿介の前へ現れ、彼を悲劇へと導いてゆく…幻影妖美の傑作刀剣ミステリ。(引用ブックデータベース)
おすすめポイント!
狂おしいほど美しい流血シーン!
あらすじにもある通り、これは刀とラベンダーが招いた悲劇のお話です。どんな悲劇かというと数時間のうちに「次吉(つぐよし)」という妖刀によって、この刀の研師である泰邦(やすくに)と主人公の母、そして父が次々に亡くなったのです。(←ちなみに研師は他殺か自殺か不明。母と父は自害。)
この現場はおそらく目も当てられないほど悲惨でしょう。文字通りの血の海でしょう。
でもこの作品のすごいところ。それは……血の生臭さがまったくしないのです!むしろ幻想的な美しさまで感じられてしまうのです!
殺人や謎の自殺系のサスペンスやミステリーだと、骨の髄までぞくぞくするようなグロさが印象的な作品もけっこうある気がします。それはそれで良いところがあるのですが、「グロいのは苦手で…」と抵抗がある方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
この本はもちろん死を扱っているので流血シーンがありますし、それ以外にも残虐な行為?的なものも登場します。
でも血生臭さがないのです。グロくないのです。
例えば母が刀で自害するシーンが描かれていますが、それはまるで踊るようです。物語のクライマックスの流血シーン(←色々重大事件があるのです!!)では血が「バラの花」で例えられていたり、血の赤と真っ白な雪景色のコントラストが描かれていたり……
血の臭いの代わりに、どういうわけか匂う妖艶で美しい魅惑的な香り。それはラベンダーでもあり、煌びやかな金属のにほいでもあり。美しい。
とにかくこれだけの流血なのにドロドロしていないです。むしろ驚くほど美しい描写。そんな文章が恐ろしいです。(←褒めてます!)
サスペンスは好きだけどグロい描写は苦手で(;^_^A という方にもおすすめです♪
亡き母のラベンダーの香りにとらわれた、三兄弟の確執の物語!
この物語に登場する一族の印象を超簡単な言葉で一言で表すなら…
破滅的でとても興味深いマザコン・ブラコン家族だと感じました(←分かりにくい…)。でもマザコンやブラコンという言葉だけでは表せないような……とても特殊な関係なのです!!
まず物語のあらすじを少し。この物語は大迫家の庭で起こった、不可思議な死から始まります。
亡くなっていたのは名刀「次吉(つぐよし)」の研師、泰邦(やすくに)です。彼は刀を研ぐためにこの日も大迫家に訪れていました。
そんな彼の死は他殺なのか自殺なのか……この家にいた誰も分かりませんでした。でも間違いなくその刀、次吉によって命を失ったのです。
しかしまだまだ事件は続きます!それから間もなくして……驚くべきことに駿介の母と父が次々にこの「次吉」で命を絶ったのです!
泰邦の死の真相、そして母と父の自殺のワケはそのまま迷宮入り。残された子供たちである長男の昭彦(あきひこ)、次男の駿介(しゅんすけ)、三男の剛生(ごうせい)は離散してしまい、それぞれの人生を送ることになりました。さらに剛生は忽然と姿を消していて、彼が再び現れた13年越しに明かされる事件の真相はいかに?!……というわけです。
まずはマザーコンプレックスについて。これは残された三兄弟みんなに言えます。彼らは子供時代も大人になった今もみんな、「母の面影」にとらわれているのです。
例えば長男昭彦。彼は今、調香師をやっています。その理由は簡単で、母は元調香師だったから。昭彦は完全に母の面影にとらわれていて、無意識のうちか分かりませんが、母の愛したラベンダーの香水を作っています。これについては三男の剛生も同じです。この異常なまでの母への執着は、彼らを破滅的な運命に導きます。
そして特に面白いのが次男駿介の母に対する想いです。これは他の兄弟達とは真逆なのです。
実は生前、母は研師の泰邦と不倫関係にありました。(←注意:肉体関係なし。これがキーポイント)これに関しては長男と三男は「母が泰邦に奪われる!」と嫌悪感を示していた(らしい。後に分かります)ですが、駿介は違ってこの不倫関係を応援?していたのですよね。それには彼が叔母からいやいや受けてた性的ともとらえられる扱いに関係していると思うのですが……駿介は肉の交わりのない恋愛感情を抱いている自分の母と泰邦をこの上ないほど美しい人だと思っています。この母への特殊な感情が本当に面白いです!!
続いてはブラザーコンプレックスについて。この作品は昭彦(あきひこ)、駿介(しゅんすけ)、剛生(ごうせい)の三兄弟の確執の物語でもあります。素直になれない兄弟間のお話です。
確執とは少し違うかもしれませんが…特に私は次男駿介による、弟の剛生に対する異常なまでの執着が非常に印象に残りました。
三男の剛生は実は事件から間もなくして姿を消しました。中学生の時にいなくなり生きていたらもう26歳で、10年以上の年月が経っています。
兄弟の真ん中だった駿介は兄弟の仲介役的存在で、昭彦とも剛生とも仲が良かったのですが、彼は幼い頃のある出来事で自分が剛生から離れなければ今も剛生は行方不明になんてならなかったのではないか…と過去を悔やんでいるところがあります。なので駿介は今でも消えた弟剛生をどこか求めていて、何かを見ては剛生を思い出します。この執着がすごいです。
後に剛生は母の愛したラベンダーの香りをまとって姿を現すのですが……彼を見つけた時の駿介は狂っています。名前を呼ぶだけなのですが乱れ狂う感がこれまあすごい。
長男、次男、三男のそれぞれに対する想いの度合いの違いというか…どこまで心を開けるかというか……兄弟がいる方はちょっと共感するところもあるかもしれません!(^^)!
破滅へ導く「刀」と「香水」が印象的!
この作品には三人の命を奪い、残された者たちをも狂わせた名刀「次吉(つぐよし)」と、生前母が心から愛していたラベンダーの香りが大変印象的です。本を読んでいて刀のサビた鉄のにおいや、南フランスのラベンダーの香花がまじで感じられそうでした!
ちなみに妖刀『次吉(つぐよし)』を目にしたことがある、凄腕の研師で有名な泰邦の祖父が言ったセリフです。☟
あの刀……研ぎ出したらあかへんねや。封じ込めなあかんのや。本身を見せたらあかん。偽物に見えてええのや。
本来彼らは刀を美しく研ぐのが仕事なのでしょうが……「次吉」にいたっては違うみたいです。研いじゃだめだそうです。曇らせなくてはいけないそうです。
なぜなら刀が放つ魅力に呑(の)まれてしまうから。
でも大迫一族はまんまとこの「次吉」に呑まれてしましたね(;´Д`)
それにしてもこてこて?の関西の言葉、なんか素敵です…♡
ラベンダーが感じられる一節も探してみたのですが……「これ!」というものが見つかりませんでした…(´;ω;`
でもどういう訳かすごくラベンダーが印象的なのです。ラベンダーの香りが物語に漂っているのです。お花が好きな方にはおススメです!!
ちなみにラベンダーの花言葉のひとつは「疑惑」です。
物語に出てくる「カタナ」という名前のラベンダーの香水を嗅いでみたくなりました(笑)
個人的ここ好き!なシーン
何気に一番好きなのは冒頭かもしれません。面白い作品ってしょっぱなから引き込まれます。
この作品の本当の本当に一番最初の文は…
彼は、少し苦しいと言い、苦しいことはおれは好きだ、と言った。
なのです!
いや~書き出し最高です。「え?どういうこと?」ってなりました。
ここでいう「彼」はなぞの死をとげた次吉の研師、泰邦(やすくに)のことです。
いっけんマゾ発言(笑)ですが、発言の真意は……マゾではなかったぁ!(笑)
題名にもなっている「オイディプス」とは一体何なのでしょうか。物語を読んでもヒントが見つからなかったのでこの単語自体を調べてみました。
意味を知ると題名の意味が納得です。
オイディプスで検索すると、「オイディプス王」というものが出てきました。『デジタル大辞泉の解説』によると…
ギリシャ神話で、テーベ王ライオスとイオカステの子。アンティゴネの父。宿命により、知らずして父王を殺し、生母を妻としたが、事の真相を知って自ら両目をえぐり取り、諸国を放浪して死んだ。怪物スフィンクスのなぞを解いたことでも有名。ソフォクレスに「オイディプス王」「コロノスのオイディプス」の二悲劇がある。エディプス。 引用:デジタル大辞泉
だそうです!自ら両目をえぐるって……(゜レ゜)ギョエ―――!!
兄弟達の母に対する執着が題名のオイディプスなのだと思うのですが…「オイディプスの刃」の【の】ってどういう意味なのでしょうか……刃がオイディプスってどういうことなのでしょうか……もっと読み込んで答えを探す必要がありそうです(笑)
エディプスコンプレックスとは
前述の「オイディプス王」の話になぞらえて提唱された概念に「エディプスコンプレックス」というものがあるそうです。かの有名な精神科医、フロイト博士が提唱したらしいです。
エディプスコンプレックスとは、母親を手に入れようと思い、また父親に対して強い対抗心を抱くという、幼児期においておこる現実の状況に対するアンビバレントな心理の抑圧のことをいう。 (引用ウィキペディア)
とのこと。もっと長い説明がウィキには書いてあったのですが…私には難しくてよく分かりませんでした(;^_^A
でもこの解説を見た感じだと『オイディプスの刃』に出てくる兄弟達はこのエディプスコンプレックとは違う気がします。父親に対する対抗心はないと思われます。お父さん、The亭主関白感は感じられなく今っぽい?(今っぽいってなんだ…?)家族を本当に愛するめちゃくちゃいい人でしたので…。
どちらかというと父親に対してよりも兄弟に対しての対抗心かな?
さいごに
『オイディプスの刃』おすすめポイントのまとめ
〇生臭さゼロ。流血表現がどうしてか美しかった…(驚き!)
〇一言では表せないマザコン?兄弟達がとらわれた母の面影!
〇一言では表せないブラコン?兄弟たちの確執・執着!
〇破滅へと導く「刀」と「ラベンダー」が印象的!
この『オイディプスの刃』は第1回角川小説賞を受賞しているそうです。
またウィキペディアによると作者の赤江瀑先生は
主に芸能や工芸の世界を舞台にした、耽美的、伝奇的な作風で、熱烈な支持者を持つ。
らしいです。
これが私にとって赤江先生の初読みなので全体的な作品の特徴は知らないのですが、「芸能」や「耽美的」というのはなるほど納得です。
日本刀が大変印象的でしたし、なにしろ文章がすごく美しかったです。
余談ですが根っからの関東人である管理人、どういうわけか関西の言葉に惹かれます。
有名な言葉なので知っている方がほとんどだと思いますが 「おおきに」って響き、なんか素敵です。
途中舞台が関西になるので関西の言葉が好きな方にもおススメですよ♪
これを読んでくださった方は、ご兄弟はいらっしゃいますか?あまり需要のない情報だと思いますが、管理人は3歳下の妹がいます。自分が幼い頃は本当に上の兄弟が欲しかったです(妹ごめん)。でも今考えるとこの2人姉妹でよかったなと思います。
血の通った兄弟・姉妹と言えども自分ではない他人ですからね、意見の衝突だってもちろんあります。子供のうちはおもちゃの取り合いとかくだらないケンカしてもいつのまにか仲直り~的なところもあるかもしれませんが、大人になったらそうもいかない場面もあるようになるのでしょうか。お互い家族ができて、守るものもできて、お金のこととか…いろいろ。まだ想像もできませんが…(汗)
でもこの物語のような兄弟の終わりを迎えるのはとっても寂しいと思いました。せっかく兄弟で生まれてきたのだから、ずっと仲良くしていたいです。
とりあえず明日、妹のキットカット食べすぎたことを謝ろうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました(*- -)(*_ _)ペコリ
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